JR篠ノ井線姨捨駅は、眼下に善光寺平と姨捨の棚田が広がり、日本三大車窓の一つに数えられている。棚田を含めた眺望を楽しむなら昼間の方が良いが、夜景も評判であり、日本三大名月の里とも言われている。姨捨駅からの夜景は「日本夜景遺産」にも認定されている。
姨捨駅は長野から普通列車で30分程度、本数も1時間に1本程度あるので、訪れることは全く難しくない。ただ、夜景を見に行く観光客向けの列車として、「快速ナイトビュー姨捨」が期間限定で運行されており、今回はこれに乗車してみることにした。この「快速ナイトビュー姨捨」も、2015年7月に、施設型夜景遺産として「日本夜景遺産」に認定されている。
快速ナイトビュー姨捨に用いられる車両は、HB-E300系ハイブリッド気動車である。この車両は2010年に運行を開始し、土・日・祝日を中心に、「リゾートビューふるさと」として長野から松本を経て南小谷まで往復しているが、2012年以降は「快速ナイトビュー姨捨」にも用いられている。「快速ナイトビュー姨捨」は通年運行ではなく、2021年は、7月2日から9月24日までの金曜日の夜に、長野と姨捨の間で1往復の運行が設定されていた。往路は、長野駅を18時48分に出発し、姨捨駅に19時23分に到着する。復路は姨捨を20時24分に出発し、長野駅に21時02分に到着する。
かつては、特製弁当付きの旅行商品や、「ナイトビュー姨捨往復きっぷ」といった企画乗車券が販売されていたようであるが、2021年は設定されていないようであった。乗車券と指定席券は、えきねっとで購入した。事前にA席が善光寺平側であることを確認し、A席を購入した。出発前日に予約をしたのだが、新型コロナウイルス感染症の流行のためか、全体的に空いており、A席にも空席はいくつかあった。
2021/9/24:JR篠ノ井線:快速ナイトビュー姨捨:長野→姨捨
2021年9月24日金曜日。この日以降はナイトビュー姨捨の運行は設定されていないので、今年最後の運行日のようであった。
乗車券と指定席券は、事前のえきねっとで購入のうえ、長野駅の券売機で発券した。
乗車券。長野から姨捨までは片道420円である。
指定席券は530円也。姨捨までは所要時間35分である。
長野駅では2番線から出発する。
ホームでは、係員が横断幕を持って乗客を出迎えてくれた。
リゾートビューふるさと。(以下、一部写真は復路の長野着後に撮影)
”RESORT HYBRID”と書かれている。どういう意味でハイブリッドなのかと調べてみると、JR東日本のリゾートビューふるさとを紹介するウェブページに、ディーゼルエンジンとリチウムイオン蓄電池を組み合わせ、駆動力に電気モーターを使用している旨の記載があった。それだからか、走行音は、気動車というよりも電車のそれであった。
ドア付近。長野県のマスコットキャラクター「アルクマ」が迎えてくれる。
まだ新車のように見えるが、誕生から既に10年が経過している。
行先表示器。
姨捨行きの列車はこの列車のみである。
車内。
座席。眺望への配慮であろう、座席は、床から一段上がったところに設置されている。
シートピッチは1200mmとのことである。一般的な特急列車のグリーン車よりも広い。座席を向かい合わせにしたときでも狭くはないであろう。
座席ポケットの横にはカップホルダーがある。
背面テーブルもあるが、座席肘掛けにもインアームテーブルが格納されている。
座席にも、"RESORT HYBRID"と刻まれていた。
車内にはテレビモニターがあるが、快速ナイトビュー姨捨では使われていなかった。
車内にも、いたるところに、「アルクマ」がいる。
1号車のドア寄りには、大型の「アルクマ」が座っていた。このご時世だからか、しっかりとマスクをしている。
最前部と最後部には展望スペースが設けられている。
前面・後面展望ができるほか、テーブルには沿線の写真集が置かれていた。
外から展望室を見ると、このような感じである。
デッキには車内販売で使う冷蔵庫があった。
その冷蔵庫の上に、写真撮影の際に使うであろう板があった。
デッキには、大型の車いす用トイレと男子小用トイレが1つずつ設置されている。
洗面所もある。
列車は、長野駅を定刻18時48分に出発した。善光寺平側のA席はそこそこ埋まっていたが、空席もある。その他の席はほぼ空席である。2人客もいたが、圧倒的に1人客が多い。
出発後のチャイムは、かなり前に特急列車で聞いたものであった。何種類かのチャイムを搭載しているようである。
列車には車掌のほかにアテンダントが乗務していた。観光放送を行ったほか、往路は車内販売も担当していた。先日乗車した新幹線ではアルコール類の販売はなかったが、この列車ではビールの販売もあった。そのほか、おつまみ品、ホットコーヒーやサイダー、リゾートビューふるさとのオリジナルグッズが販売されていた。
篠ノ井駅で数名が乗車した後、列車は篠ノ井線に入る。
稲荷山駅を通過して勾配を上っていく。
19時08分に桑ノ原信号所に停車する。スイッチバック式の信号所で、本線に対して斜めに引上線がある。今となってはきわめて珍しい構造である。スイッチバックをして引上線に入る。
駅ではないが、「銀河鉄道桑ノ原」という駅名標があった。駅の誘致計画もあるらしい。
8分ほど停車し、長野行きの普通列車に道を譲った後、19時16分に桑ノ原信号所を出発した。
5分ほど走り、姨捨駅の引上線に入り、スイッチバックで姨捨駅に進入する。姨捨には19時23分に到着した。
姨捨駅では、松本方面行きの列車が停車する2番線の、松本方の端っこに停車した。跨線橋はだいぶ先である。妙な位置であるが、何かしら理由があるのだろう。
列車は、この駅で折り返しまで待機するのではなく、一旦回送となる。数分の停車の後、出発していった。
かつては姨捨駅でイベントが行われた時期もあったようだが、このときは何もなかった。帰りの列車まで1時間ほど時間があるが、夜景を見るしかすることがない。夜景はきれいであるが、10分程度見続けていれば、もういいかなと思う。
姨捨駅の下に本線が通っている。
駅舎には通常の待合室もあるが、写真などが飾られているスペースも開放されていた。こちら、通常は昼間だけの開放のようであるが、ナイトビュー姨捨の運行日ということで、この時間も開放してくれたのであろう。
姨捨駅駅舎。
姨捨公園にも行ってみた。公園への道は街頭もなく真っ暗であったが、公園のベンチには何人かいた。
【→昼間の姨捨駅はこちら】
2021/9/24:JR篠ノ井線:快速ナイトビュー姨捨:姨捨→長野
20時20分頃に、長野行きのナイトビュー姨捨が到着した。
帰りの乗車券と指定席券。事前に長野駅で発券しておいたものである。
長野行きの快速ナイトビュー姨捨は、定刻20時24分に姨捨を出発した。
姨捨駅を逆方向に出発し、松本側の引上線まで下がった後、進行方向を変えて長野に向けて走り出す。このタイミングで放送が入り、車内の電気が消灯する。車内からも夜景がきれいに見えるようにという、この列車ならではのサービスである。比較的ゆっくりと走行する。
20時32分に桑ノ原信号所に到着すると、照明が再び点灯した。復路も、この信号所で4分ほど停車した。
帰りは車内販売の営業がなく、静かな車内であった。
篠ノ井に停車した後、終点の長野には21時02分に到着した。
【JR篠ノ井線の乗車記録】
長野から松本へ:JR篠ノ井線:特急しなの6号:2021/9/20
塩尻から長野へ:JR篠ノ井線:特急しなの11号:グリーン車:2021/9/11
7,姨捨駅(長野県・JR篠ノ井線):2006/12/2【2006/12信越】
【観光列車の乗車記録】
(JR北海道)
10,JR釧網本線:くしろ湿原ノロッコ号:2018/8/27【2018/8北海道】
10,JR富良野線:富良野・美瑛ノロッコ6号:2006/7/30【2006/7北海道】
(JR東日本)
平泉から盛岡へ:JR東北本線:ジパング平泉3号:2017/5/5
3,JR米坂線・山形鉄道フラワー長井線:臨時快速「風っこ花回廊1号」:2009/6/7【2009/6山形】
3,三陸鉄道北リアス線・JR山田線:さんりくトレイン北山崎号:2007/8/4【2007/8岩手】
7,五所川原から秋田へ:JR五能線:快速リゾートしらかみ4号:2006/2/18【2006/2北東北】
(JR西日本)
10,JR木次線:奥出雲おろち号:2009/10/4【2009/10西日本】
(私鉄各社)
8,会津若松から会津田島へ:会津鉄道:お座トロ展望列車・会津浪漫花号:2020/10/10【2020/10東北】
6,津軽鉄道・ストーブ列車:2006/2/18【2006/2北東北】
(アメリカ合衆国の観光列車)
35,サンペドロ:ウォーターフロント・レッドカーライン(Waterfront Red Car):2014/9/20【2014/9コロンビア】
(オーストラリアの観光列車)
19,アデレードからメルボルンへ:ジ・オーバーランド(The Overland)(1):2013/2/22【2013/2オーストラリア】