2013年2月23日水曜日。この日は、メルボルンからシドニーまで、カントリーリンク社(Country Link)が運営する"XPT"(eXpress Passenger Train)と呼ばれる州際特急列車で移動する。昨日乗ったジ・オーバーランド(The Overland)号が観光列車としての位置づけであるのに対し、こちらは、現役の都市間特急である。メルボルン~シドニーは、毎日、昼行・夜行各1便が運行されている。
"XPT"の乗車券は、カントリーリンクの公式WEBから、WEB限定、キャンセル・変更不可という制約付きの割引乗車券を購入していた。クレジットカード手数料や燃料サーチャージなどの諸経費も込みで、AUS 69$であった。
7時45分にホテルをチェックアウトする。外は涼しい。20度くらいだろうか。半袖の上に長袖の上着を羽織る。
サザンクロス(Southern Cross)駅のハングリージャックスで朝食をとる。エッグマフィンとカプチーノで5.25ドル也。クレジットカードで支払う。ハッシュドポテトが中に入っていたが、店員が間違えたのか、それともセットなのかは分からない。
2013/2/23:Country Link:Southern XPT CLK624:Melbourne (Southern Cross Station) → Sydney (Central)
8時過ぎ、メルボルン駅1番線ホームへ行く。既にシドニー行きのXPTが入線している。
隣のホームからは、ちょうどジ・オーバーランド(The Overland)号がアデレードに向けて出発していくところであった。昨日見かけた車掌が、列車から顔を出して出発監視している。あちらも気がついたようで、手を振ってくれる。アデレード~メルボルン1往復が1勤務なのだろう。
また、別のホームからは、V/LINE(ヴィクトリア州の鉄道会社)の中・長距離列車と思しき列車も出発する。中央駅だけあって、なかなか忙しい。
さて、XPTであるが、先頭と最後尾は機関車で、客車が機関車にサンドイッチされた構成である。ヨーロッパ式というのだろうか。外観を見る限り、かなり古めかしさを感じさせる。
客車は、エコノミーとファーストからなる。夜行列車の場合は、さらに寝台車両も連結されるが、昼行のこの列車には連結されない。窓は、外側から見るに、何らかのコーティングがなされており、見る角度によっては金色に見える。紫外線とか暑さ対策であろうか。
列車の号車表示は番号ではなくアルファベットである。Eチケットで号車を確認し、早速乗車する。エコノミークラスの車両である。
座席も、やはり古めかしさを感じさせる。ただ、座り心地は普通のリクライニングシートで、悪くない。きちんとメンテナンスがされている。テーブルは大きめ。座席下にはフットレストが完備。シートピッチは日本の特急列車と同じくらいだろう。
座席背面。
フットレスト。
空調。
デッキには、日本の列車ではほとんど見かけなくなった冷水器が設置されている。
トイレ。
定刻8時30分、メルボルン駅の1番線を出発した。1番線というと華々しい感じがするが、この駅の1番線は少し奥まったところにあり、なんとなく、V/lineに遠慮してこそこそと出発していく感がある。
既に隣の席には男性客が座っている。車内は大半が埋まっていた。客層は、昨日の観光列車とは質の異なったカジュアル感がある。これは、この列車が現役の都市間連絡特急という性格を有しているからだろう。
メルボルンを出発して10分程度は、なかなか速度が上がらない。ラッシュ時間帯でゆえに前が詰まっているのだろう。
10分少々で、シドニーへ向かう線路に入ったのか、速度も順調に上がる。
シドニーまでの全区間で言えたことだが、線路の状態が非常に良く、乗り心地が良い。昨日のジ・オーバーランド(The Overland)のサウスオーストラリア州の一部区間とは天と地ほどの差であった。高速運転が売りのXPTを毎日2便運行走らせていることもあり、ヴィクトリア州とニューサウスヴェールズ州の鉄道会社がしっかりと保線をしているのだろう。
車掌が検札に来る。私の場合は、出発前に印刷したEチケットを見せる。
メルボルン出発後、3,40分程度は近郊線と併走する。一旦は車窓に草原が広がったが、そののちまたベッドタウンを走る。メルボルンのベッドタウンであろう。もっとも、いつの間にか、また草原が現れる
9時00分にブロードメドーズ(Broad Meadows)、9時49分にセイモア(Seymour)に停車する。この2駅は、運転停車か客扱いの駅かは分からない。
10時44分にベナラ(Benalla)、11時12分にウォンガラッタ(Wangaratta)に停車する。
道路が並行している区間がある。道路の方の最高時速は110kmであった。こちらは、それをスルスルと追い抜いていくので、時速130kmは出しているのだろうと思う。
メルボルンからシドニー間の車窓には緑が多い。羊、馬、牛といった家畜が、群れをなしているのが所々で見える。なかなか楽しい。街も時々現れる。昨日はひたすら荒涼とした車窓であったが、それと対比すると、こちらの区間は変化に富んでいるといえよう。
車掌が、たびたび"Rubbish, Rubbish"と言いながら青いビニール袋を持って車内を歩く。ゴミ回収である。
11時53分、アーベリー(Arbury)に停車する。乗客が大きく入れ替わる。V/lineの客車が停車している、メルボルンからの特急列車だろうか。11時57分に出発する。
12時24分、カルケアン(Culcairn)に停車する。駅名表がV/LineからThe Southern Lineのそれに代わる。ヴィクトリア州からニューサウスヴェールズ州に入り、管轄が代わったのだろう。この駅の停車時間は10秒程度であった。
隣の車両が売店であるので、行ってみる。昼食はセットがあるらしい。それについて聞いてみると、5種類の中から選択するように言われ、ボードを見せてくれる。そういえば、先ほど、売店のスタッフがこれを持って車内を歩き、客に何かを聞いて、紙を渡していた。昼食の注文を取っていたのだろう。5種類の中から、"Roast Chicken and Baked Vegetable"を選ぶ。AUS9$。日本の駅弁と思えば、そこまで高いわけではない。クレジットカードで支払う。
昼食のセットメニューは、準備に1時間ほど時間がかかり、準備ができ次第放送がなされるとのことであった。
12時50分、ザ・ロック(The Rock)に停車する。日本風に言えば「岩」である。"The Rock"という街の名は、街から見える大きな岩山に由来するのだという。
13時10分、ウォガ・ウォガ(Wagga Wagga)に停車する。The Rockに引き続き、一風変わった響きの地名である。後で調べてみると、オーストラリア最大の内陸都市という。もっとも、人口は45000人程度。列車から見る限りは、あまり大きな都市には見えなかった。
13時20分、売店からの放送がある、昼食の準備ができたという。昼食を買った客はそう多くはいないようであったが、客がぞろぞろと売店の方へ向かう。
準備に時間がかかるだけあって、きちんと温められていた。客から注文を取り、その分をレンジに入れて温めたのだろう。パンが一個添えられていた。味は良かった。
13時32分、ジューニー(Junee)駅を通り越して停車する。放送が入る。メルボルン行きのXPTを先に駅舎寄りのホームに入れ、出発させてから、この列車を駅舎寄りのホームに入れるという。まもなく、メルボルン行きのXPTとすれ違う。13時41分、逆走を開始する。13時43分、ジューニーに停車する。8分ほど停車した。
14時、少し雨が降っている。列車はループ線を走行しているようである。あまり実感はわかないが、たぶん山の中なのだろう。日本の山とは違い、スケールが大きいため、山の中とはいえ多くの区間では両側が開けている。軽快に丘を駆け上がり、平地の直線区間をかっ飛ばす。
14時35分、クータマンドラ(Coota Mundra)に停車する。隣客が降りる。ここでも若干の乗客の入れ替わりがあり、隣には老婦人が座った。
指定席をとれなかったのか、デッキに若者が多く立っている。彼らはバカ騒ぎをしており、デッキと車内とを遮る仕切り扉が開く度に、その声が車内に響く。さらに、車内でもうるさくしている集団がいる。携帯電話で大声で話をしたり、友人と大声で話したりしており、行儀が悪い。
15時08分、Hardenに停車する。
16時02分、ヤス・ジャンクション(Yass Junction)に停車する。後ほど調べたところ、Yassという街に近い駅という意のようである。
車内放送で、夕食の注文を取るアナウンスが流れる。売店のスタッフが、夕食のメニューを書いたボードを持って車内を回る。やり方は昼の時と同じである。メニューも昼と変わらない。今回は、注文する客も目立つ。
16時33分、Gunningに停車する。
小腹が空いたので、売店でラップを購入する。6.80ドル。クレジットカードで支払う。ボリュームがあり、美味しい。
薄暗くなってくる。
17時10分、ゴールバーン(Goulburn)に停車する。雨脚が強まる。
18時00分、モス・ベール(Moss Vale)に停車する。ここで隣の老夫人が降りる。
シドニーからの中距離列車の車両だろうか、2両編成の列車とすれ違う。山の中を走っている感である。
急ブレーキがかかって、突然停車する。信号所とも思えない。わずかに停車した後、すぐに走り出す。動物とぶつかりそうになったとかということだろうか。
19時06分、キャンベルタウン(Campbelltown)に停車する。シドニーの近郊区間だろう。通勤列車の車庫もあるし、駅には自動改札機も設置されている。駅周辺にも、都市部を思わせるビルが見られる。
いつの間にか雨がやんでいる。
昼間の快走はどことやら、徐行運転が続く。やはり都市部に入ると前が詰まるのだろう。線路の左右には住宅が続く。
19時42分、ストラスフィールド(Strathfield)に停車する。
終点、シドニー・セントラル駅には19時54分に到着した。定刻であった。2番線に入線した。
メルボルンから11時間24分。こちらは、機会があったらまた乗っても良いかなと思う。
シドニー・セントラル駅。
再びホームに目をやると、1番線にもXPTが停車していた。寝台車も連結した夜行の編成であった。
【2013/2オーストラリア】(目次)
19,メルボルン:イビス・メルボルン・リトルバークストリート(ibis Melbourne Little Bourke St.):2013/2/22【2013/2オーストラリア】
20,メルボルンからシドニーへ:XPT :2013/2/23【2013/2オーストラリア】【←本記事】
21,シドニー・セントラル駅からシドニー空港へ:エアポートリンク(Airport Link):2013/2/23【2013/2オーストラリア】