アルピコ交通上高地線は、松本と新島々の14.4kmを結ぶアルピコ交通の路線である。前身の筑摩鉄道によって松本から新村まで開業したのが1921年で、その翌年の1922年に全線開業に至った。松本市内を東西に結ぶ路線であり、終着駅の新島々は上高地、乗鞍方面への乗り継ぎ拠点となっている。
上高地線には2007年に乗車したことがある。その際は、社名が松本電気鉄道であった。松本電気鉄道は、2011年にグループの川中島バス、諏訪バスを吸収合併し、鉄道・バス事業を統合し、社名をアルピコ交通に変更して現在に至る。
さて、この上高地線であるが、2021年8月14日の豪雨「令和3年8月の大雨」で、西松本~渚間の橋梁の橋脚が傾き、同区間で列車の運行ができなくなった。そのため、8月16日より松本~新村間でバスによる代行輸送を開始した。9月半ばに、橋梁の工事を終えて本格復旧するのは来年夏との見通しが報じられた。また、10月8日に渚~新村間で列車の運行を再開し、バスによる代行輸送の区間が松本~渚間に短縮することとなった。
2021年9月11日土曜日。
松本まで来たので、上高地線にも乗っておくことにした。この時点では、列車の運行は新村から新島々までであり、松本から新村まではバスによる代行輸送であった。
松本駅。
9時54分に松本を出るバスに乗車することとして、まずは松本駅で乗車券を購入する。JRの自動券売機の一部がアルピコ交通にも対応しており、そちらで購入することになる。今回は1日乗車券「上高地線電車わくわく1日フリー乗車券」を購入した。値段は1,420円である。松本~新島々の片道普通運賃が710円であるから、往復分の値段である。なお、今回は利用しなかったが、沿線所在の指定されたレストランや観光施設では、この1日乗車券を提示することで割引等の特典が受けられるという。
2021/9/11:アルピコ交通上高地線:松本→新島々
通常であれば上高地線の列車は松本駅7番線から出発し、改札口はJRと共用である。ただ、このときはバス代行であり、出発は松本駅アルプス口となっていた。(後ほど撮影)
アルプス口には、アルピコ交通のバスが3台並んでいた。バスの運転手以外に係員も数人待機しており、一番前のバスに誘導される。
車内は既にほとんどの座席が埋まっており、相席となった。出発までに、正座席がすべて埋まった。このような満員のバスに乗車するのは久しぶりである。今から上高地方面へ行くという風の旅行客が多かった。
出発前に、運転手ではない係員が乗り込み、新村までがバス代行、そこから先が列車であることを案内する。この係員は、案内の後にバスを降りていった。
定刻9時54分に松本駅アルプス口を出発する。松本から新村までは列車では7駅、14分であるが、代行バスでは所要時間25分となっている。
車内のモニターには、この代行バス用のプログラムが設定されていた。
新村までの各駅では、駅前に入ることはせず、やや離れたところで停車する。西松本駅は、県道沿いの中条バス停が停車場所となっている。このあたりは道が広い。
信濃荒井駅を過ぎると、大型バスが走るには細いのではないかという道を走る。
北新・松本大学前駅では、大学生であろうか、一定数の客が降りていった。
新村駅には10時21分に到着した。定刻が10時19分であるから、許容範囲であろうか。
ここで列車に乗り換えとなる。駅員が列車へ誘導する。
アルピコ交通上高地線の車両は、現在は3000系のみである。上高地線では1999年に運用を開始した。2両編成が4本在籍しているとのことである。もともとは京王電鉄井の頭線で使用されていた京王3000系である。
新島々行きの列車は10時24分の出発であるが、全員の乗り継ぎが終わるのを待って2分遅れの10時26分で出発した。ここまで乗ってきた客の大半が、大きなリュックをバスのトランクに入れており、それらを下ろすのに時間がかかったようであった。席はある程度埋まっていた。
車窓から。
三溝駅。「さみぞ」と読む。近隣に安養寺というお寺があり、しだれ桜が有名らしい。
渕東駅。「えんどう」と読む。駅名標には、上高地線のイメージキャラクター「渕東なぎさ」が描かれている。
車窓から。
終点の新島々には10時41分に到着した。
新島々駅の駅名標。長野県PRキャラクター「アルクマ」、松本市マスコットキャラクター「アルプちゃん」、上高地線のイメージキャラクター「渕東なぎさ」が並んで描かれている。
渕東なぎさが4名並んでいる。
新島々駅にはバスターミナルが併設されており、上高地や乗鞍高原へのバスが出発している。
バスの切符売り場。
10時50分に乗鞍高原行き、上高地行きが相次いで出発するため、駅は賑わっていた。
2021/9/11:アルピコ交通上高地線:新島々→松本
折り返し10時53分発の新村行きの電車に乗車した。ここまで乗ってきた列車の折り返しである。
行きとは異なり、新村への列車は空いていた。
行先は「松本」になっている。
ワンマン運転であるから、車内に運賃箱がある。
このご時世だからか、消毒液が置かれていた。
東急車輌で1966年(昭和41年)に製造された車両である。1999年(平成11年)に、改造のうえ松本電気鉄道に譲渡された。
車内。貫通路が広く、車内全体を見渡すことのできる構造となっている。また、Free Wi-Fiが使用可能であった。
モニターがあり、案内を表示していた。
ドア上には路線図がある。
一部のドアにはドアボタンが設置されていた。
代行バスの案内と被害状況を知らせる紙が車内につり下げられていた。
新村には11時08分に到着した。ここでバスに乗り換えである。係員が総出で案内をしていた。
松本行きは人が多くなく、時間的にも若干余裕があったので、駅の写真を撮ることができた。
松本電気鉄道の前身の筑摩鉄道の社章があった。新村駅の旧駅舎に掲げられていたもののようである。
松本駅行きのバスは、11時13分に新村駅を出発した。
北新・松本大学前駅の代替停留所は、セブンイレブン松本新村店の前にある。ここで一定数の客が乗車した。
車内。行きに比べれば空いていたが、それでも6割程度の座席が埋まっていた。
西松本駅の代替停留所は、アルピコ交通の中条である。
アルピコ交通西松本駅の前を通る。
西松本駅の渚寄りすぐのところに田川にかかる橋梁がある。この橋梁が被災したようである。
松本駅アルプス口には11時40分に到着した。
【2007年の上高地線乗車記録】
8,松本電気鉄道上高地線:2007/5/14【2007/5甲信越】
【元京王3000系の乗車記録】
13,上毛電鉄上毛線:2011/10/16【2011/10関東】